障害児保育園ヘレン事務局スタッフ – 石川廉さんにインタビュー

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1.フローレンスはいつ頃から働いていますか

20144月に入社し、ちょうど1年半経ちました。その間に、障害児保育園ヘレンが開園したりと、色々ありましたね。

2.なぜフローレンス(障害児保育園ヘレン事務局)で働こうと思いましたか

「障害児に関わる問題」を解決できるのはフローレンスしかないと考えたためです。前職のNPOでは、障害のある乳幼児から、成人の方までの支援を行っていました。障害のあるお子さんを出産すると、仕事をすることが難しい、という現実を目の当たりにしました。私は共働き家庭で育ったので、子どもが理由で働けない現実に、とても衝撃を受けました。また、その問題が起きているのはなぜかという疑問も同時に湧いてきました。理由は、簡単です。障害児を預かるだけの仕組み・制度が、今の日本社会にはないということです。

ある例えで「川で溺れている赤ちゃんを救うのと同時に、川上から赤ちゃんを投げ入れている人を止めなければいけない」という言葉があります。『溺れている赤ちゃんを救うこと=現在困っているお子さんを助ける保育園を作ること』も必要ですが、『川上で赤ちゃんを投げ入れている人を止める=保育園を作ることができる法制度の整備』も同じように必要です。この2つを同時に実行しているのが、フローレンスであり、まさに私のしたいことと合致し、入社を決意しました。

あと、これは余談ですが、大学時代にフローレンス代表理事「駒崎」の本を読んだことがフローレンスを知ったきっかけでした。それからはSNSなどで彼をずっとチェックしており駒崎の隠れファンです(笑)その時から、いつかフローレンスで働きたい!とそういう野望はずっと持っていたので、入社できたことはとても嬉しかったですね。

3.ヘレンでは今、何人のお子さんがいますか?

現在13名のお子さんが通っています。知的や身体に重度の障害があるお子さんや、医療的ケアが必要なお子さんがいます。

4.子どもたちや母親たちとの関係について教えてください。

私は、事務局スタッフという働き方ですので「保育」には直接関わっていません。

私の仕事は、保育スタッフが「保育」に注力できるよう、バックオフィスで支える仕事をしています。ひいてはそれが子どもたちのためにつながると考えています。たまに保育に入ることがありますが、子どもたちには「時々現れるヒゲのおじさん」と思われているのかもしれません(笑)

5.子どもたちがヘレンに入園してからどれくらい、またはどのように成長してきましたか?

開園してから1年が経ちましたが、子どもたちは驚くほど成長しました。あらためて実感したことは「子どもは子どもの中で育つ」ということです。今の日本社会は、重度の障害や、医療的ケアがあるお子さんが通える保育園や施設は限りなく少なく、24時間365日、家や病院など限られた環境で過ごすお子さんが多いのが現実です。ヘレンに通うお子さんもそのような環境にある子も少なからずいましたが、ヘレンに通うことで、同年齢の「友達」と過ごす環境となり、それが子どもの発達にとても大きな影響力を持っていたことがわかってきました。例えば、経管栄養で育った子は、お口に食べ物を入れることに抵抗がありますが、ヘレンに通いはじめて、お友達が口からおいしそうに食事している姿や全部食べきって褒められる姿を見て、自らお口に入れ、食に興味を持ち始めたり!また、人に触れられることがあまり好きではなく、周りへの興味が薄く一人で過ごしている子は、最近は一緒に横に寝ている友達に自分から近づいて行ったり、笑顔で見ていたりと、周りへの興味がとても広がっています。

限定された場所で生活せざるを得ない環境で過ごしていた子どもも、友達がいる環境で毎日刺激ある時間を過ごし、すくすくと成長しています。

6.保護者の方とはカウンセリングなど行ったりしていますか?

保育園という場所ですので、保護者へのカウンセリングはしていませんが、「親子交流会」というイベントを行い、保護者とスタッフ、あるいは保護者同士でお話できるという時間を定期的に作っています。普段はお仕事をしているため、ゆっくりと時間が取れない保護者のみなさんですので、「色々な方と話せてとても良かった!」と好評です。

7.このプロジェクトの大切と、なぜ、未だにそこまで注目されないのかを教えてください。

先ほども少し話しましたが、障害のある子を持つと保護者は仕事を選択することが難しいのが現実です。これを私たちフローレンスは「障害児保育問題」と呼んでいます。これまで「あきらめるしかなかったこと」に対し、「重い障害のある子や医療的ケアのある子どもでも長時間預かる場所がある」という、社会に対しひとつの解決策を提示できたということはとても大きな意義があると考えています。

しかし、重度の障害や医療的ケアが必要なお子さんの人数は少なく、そもそもこのような問題があることを「知らない」という人は多いと思います。

少しずつかもしれませんが、この「障害児保育問題」を、障害児保育園ヘレン・フローレンスを通じ、たくさんの方に伝えていきたいと考えています。そうすることで、関心を持つ人が増え、それが世論となり、社会を変える力になると思います。

 

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8.もし、日本の障害のある子どもに対しての教育システムを変えられるとしたら何を変えますか?

個人的な意見ですが、障害があってもなくても、一緒の場で育つというような教育システムになればと考えています。乳幼児期を過ごす保育園もそうですが、小学校から高校までの学齢期でも、障害のある子とそうでない子が分けられて生活しています。つまり、問題は「選択肢が与えられていない」ということです。無理に「一緒に過ごすこと」でもなく、「本人や家族が望む」場所を選択でき、それを受け入れる場がいくつも存在する、そんな社会になるといいなと思います。

9.石川さんは、このプロジェクトを通して、どのような夢を持っていますか

私たちフローレンスには、大きな夢、言い換えればビジョンがあります。

「障害のある子どもたちが、自らの肯定感、未来への希望を持ち、障害のある子の親たちが、子育てと仕事を共に楽しめる社会」です。

そんなの無理だよ、と言う人がいるかもしれません。ですが、私たちはその夢を抱き、障害児保育園ヘレンという1歩を踏み出しました。きっとできる、私たちフローレンスは、そう強く信じています。

10.このプロジェクト(障害児保育事業)に関わるようになってから石川さんや自分の人生でどのような影響がありましたか? 

私は現在、結婚もしていないですし、もちろん子どももいません。フローレンスは「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」というミッションを掲げていますが、正直、私がここにいていいのか、当事者じゃない私が、「子育て支援」なんてできるのか、とても不安がありました。ですが、困っている子ども、そして保護者を目の前にし、他人事ではないと感じるようになりました。子どもに罪はありません。子どもが熱を出すことは当たり前、子どもが地域で過ごし、子どもの中で育つことは当たり前、そんな当たり前が「当たり前でない」社会はおかしい。本当なら、社会がそっと手を差し伸べ、「大丈夫だよ」と言ってあげるべきだと思います。いつ、誰もがこのような状況になり得る可能性がある中で、今私自身ができること、そしてヘレンチームの一員として関わってきたからこそ伝えられることがあります。気づいた人が変えられると信じ、全力でこの社会問題に取り組みたいと思います。

11.最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

私の好きな言葉で「鏡は先に笑わない」という格言があります。「相手が笑ってほしいなら、まず自分が笑うこと」、つまり、まずは自分、決して他者からではないという意味で使われます。この対象を私は「社会」に置き換えて考えたりしています。社会からは変わらない。自分が行動することによって、社会は変わる、そんなふうに思っています。

その「変える」1歩は誰でも踏み出せます。今回はフローレンスやヘレンについて話しましたが、社会には様々な社会問題がいくつもあります。関心がある分野をネットで調べる、あるいは、気になる団体のFacebookページを「いいね!」することも社会が変わるひとつの行動だと思います。ぜひ、それぞれの1歩を踏み出してみてくれたら、とてもとても嬉しく思います。

Web:

障害児保育園ヘレン

認定NPO法人フローレンス

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